イルカはバンドウなのかハンドウなのか

先日、和歌山県太地町のクジラ博物館へ行ってきた。
骨も生体も充実の場所でとてもよかったのだが、イルカたちを見ていてふと思った
「バンドウイルカ」「ハンドウイルカ」どっちが正しいのか?
※ちなみにクジラ博は「ハンドウイルカ」派
ネットで検索してもどっちでも良い的なふんわりした回答ばかり。
由来もなんかふんわりしている。
そこで、

①信用度の高い文献(論文とか)ではどちらの名前のほうが使われている数が多いのか
②1においてそれぞれの名前が使われている年代に違いはあるのか
③飼育園館での表記ではどちらの名前のほうが使われている数が多いのか


を調べてみた。
使われている数が多いとか、昔から使われてたとか、そうした名前のほうが正しい度は高そうであるが、果たして…


【目次】
◇調査方法
◇①文献での使用数と②年代
◇③飼育園館での使用数
◇まとめ


◇調査方法

①と②ではいつの年代にどのくらい文献があったかを検索した。
単純にググると信憑性の薄い情報源が引っ掛かりすぎてしまうので、Google scholar(グーグルスカラー)を利用した。
多分論文を書いたことがある人なら一度はお世話になるはずの便利なヤツである。
簡単に言えば学術的にちゃんとしたところに発表された論文や学会誌など用の検索エンジンである。
エビデンス大事。

今回は「バンドウイルカ」「ハンドウイルカ」それぞれでフレーズ検索し、出てきた検索結果すべての件数・発表年・出版年を記録した。

検索結果のすべてを利用したため、論文・学会誌・雑誌・書籍など様々なものが対象となっている。
また、フレーズが含まれているならその年代ではそう呼ばれていたという証拠たり得るので良し!としたため、必ずしも自然科学や生物分野のものだけでなく、文化など他の研究分野のものもカウントに含めた。
※フレーズ検索:“”(ダブルクォーテーション)で囲んだ文字列と完全一致する文字列を含んだものだけ検索するという検索方法。
 類語や共通の「ンドウイルカ」という部分に反応して検索結果がごちゃ混ぜにならないようにするため使用した。
 今回、題にはハンドウとあっても文中にバンドウと記載があるようで両方に検出されているものが数件見られたが、
 一旦検出されたそのままのほうでカウントに含めた。

③ではJAZA(日本動物園水族館協会)加盟園館HPでの表記を調べた。


◇①文献での使用数と②年代
Google scholarで検索した結果、ヒットしたそれぞれの文件数は

バンドウイルカ…365件
ハンドウイルカ…352件

なんとほぼ互角…!
バンドウハンドウ5149だった。

では年代はというと、若干使用されている時期が異なっていることが分かった。

グラフを見ると、バンドウイルカのほうがひと昔前に件数が偏っており、ピークは2000年代。
一方ハンドウイルカは2010年代からグンと数を伸ばし、2020年頃にピークに突入している。
このことから、
おそらく2000~2010年頃にバンドウ>ハンドウからバンドウ<ハンドウへの動きが起きている
と考えられる。

また、検索結果を集計していると年度によっては同一著者の論文や文献が複数出てきた。
つまり場合によって精力的に活動していた研究者がたまたまバンドウ派だったかハンドウ派だったかでその時代の山が左右されるところもある。

割合で見ても、かつてはバンドウ派しかいない年もあったのが近年半々になるまでハンドウ派が増えてきたのが見て取れた。


③飼育園館での使用数
では動物園や水族館ではどうだろうか。
今回はJAZA加盟園館のみで調べてみたが、このような結果になった。

バンドウイルカ…10園館
ハンドウイルカ…3園館(うち1か所はバンドウを併記)

HPにイルカの飼育を明記している園館のみを対象としたうえ、今回のきっかけになった太地のクジラ博など、JAZA非加盟園館は対象外としたので母数が少ないが、動物園水族館ではバンドウが優勢だった。


◇まとめ
今回数字を出して調べてみたが、結局

バンドウイルカハンドウイルカも正しい名称。
バンドウのほうが昔ながらの呼び方で世間に浸透しているが、ハンドウも同じくらい浸透してきているのでマジでどっちでも良い。ただし指導教官や査読者に従いましょう

…ということが再確認できただけだった。

雑記
スポンサーリンク
フォロー・お問い合わせはTwitterからどうぞ
ヴンダーカンマーちょっとニッチなイラストサイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました